中古住宅を購入してリノベーションする場合、間取りや内装、キッチン、床材などに目が行きがちです。
もちろん、暮らしやすさやデザインも大切です。
ただ、築年数の古い住宅をリノベーションするなら、最初に確認しておきたいのが耐震性です。
特に築40年・築50年の木造住宅では、現在の耐震基準を満たしていない可能性があります。見た目はきれいにリフォームできても、建物の構造に不安が残ったままだと、安心して長く住み続けることはできません。
国土交通省も、昭和56年以前に建築された建物は旧耐震基準で建てられており、耐震性が不十分なものが多く存在するとしています。まずは耐震診断を行い、必要に応じて耐震改修や建て替えを検討することが大切です。
この記事では、耐震工事とは何をする工事なのか、費用はいくらかかるのか、補助金は使えるのか、中古住宅リノベーション前に何を確認すべきかをわかりやすく解説します。
耐震工事とは?
耐震工事とは、地震の揺れに対して建物が倒壊・損傷しにくくなるように補強する工事のことです。
単に「壁を強くする工事」というより、建物全体のバランスを見ながら、弱い部分を補強していく工事と考えるとわかりやすいです。
主な耐震工事には、次のようなものがあります。

| 工事内容 | 目的 |
|---|---|
| 壁の補強 | 地震時の横揺れに耐えやすくする |
| 筋交いの追加 | 木造住宅の構造を強くする |
| 構造用合板の追加 | 壁全体の耐力を高める |
| 柱・梁・土台の金物補強 | 接合部の抜けやズレを防ぐ |
| 基礎補強 | 建物を支える足元を強くする |
| 屋根の軽量化 | 建物上部を軽くして揺れの負担を減らす |
| 劣化部分の補修 | 腐食・シロアリ・雨漏りによる弱点を直す |
中古住宅リノベーションでは、壁や床を解体するタイミングで構造部分を確認できることがあります。そのため、耐震工事はリノベーションと相性の良い工事でもあります。
一方で、内装だけをきれいにしてから後で耐震工事をしようとすると、せっかく仕上げた壁や床を再度壊す必要が出ることもあります。
そのため、築古住宅をリノベーションするなら、内装より先に耐震性を確認することが大切です。
耐震工事が必要になりやすい住宅
すべての住宅に耐震工事が必要なわけではありません。
ただし、次のような住宅は、リノベーション前に耐震診断を検討した方が安心です。
- 昭和56年以前に建てられた住宅
- 築40年・築50年以上の木造住宅
- 2000年以前に建てられた木造住宅
- 増改築を繰り返している住宅
- 1階に大きな開口部や車庫がある住宅
- 壁が少ない間取りの住宅
- 基礎にひび割れがある住宅
- 雨漏りやシロアリ被害がある住宅
- 屋根が重い瓦屋根の住宅
- 過去のリフォーム履歴が不明な住宅
特に注意したいのは、旧耐震基準の住宅です。
旧耐震基準とは、現在の耐震基準より前の基準で建てられた建物を指します。国土交通省は、昭和56年以前の建物について、まず耐震診断を実施し、耐震性が不十分な場合は耐震改修や建て替えを検討するよう案内しています。
中古住宅を買ってリノベーションする場合は、物件価格だけで判断するのではなく、耐震工事が必要になる可能性まで含めて予算を見ておく必要があります。
耐震工事の費用相場はいくら?
耐震工事の費用は、建物の状態や築年数、広さ、構造、補強範囲によって大きく変わります。
目安としては、部分的な補強なら数十万円台から可能なケースもありますが、建物全体の耐震性を高める工事では、100万円台後半から数百万円になることもあります。
国土交通省の耐震改修サイトでは、築50年・2階建て・延べ面積約100㎡の木造住宅を改修する場合、224万円ほどかかるというモデルケースが紹介されています。
耐震工事の費用目安
| 内容 | 費用の考え方 |
|---|---|
| 耐震診断 | 自治体補助が使える場合あり |
| 壁の一部補強 | 数十万円〜 |
| 筋交い・金物補強 | 補強箇所数によって変動 |
| 基礎補強 | 劣化状況によって高額になりやすい |
| 屋根の軽量化 | 屋根リフォームと同時に検討しやすい |
| 全体的な耐震改修 | 100万円台後半〜数百万円規模になることもある |
ただし、耐震工事は「坪単価いくら」と単純に決められるものではありません。
同じ築40年の住宅でも、基礎がしっかりしている家と、雨漏りやシロアリ被害がある家では、必要な工事が大きく変わります。
そのため、正確な費用を知るには、まず耐震診断を受けることが前提になります。
耐震工事の費用が高くなりやすいケース
耐震工事の見積もりが高くなるのは、単に「業者が高いから」とは限りません。
次のようなケースでは、工事費が上がりやすくなります。
築年数が古い
築40年・築50年の住宅では、構造材の劣化、基礎のひび割れ、雨漏り、シロアリ被害などが見つかることがあります。
耐震補強だけで済めばよいのですが、劣化部分の補修も必要になると費用は上がります。
基礎に問題がある
木造住宅では、壁や柱だけでなく、基礎の状態も重要です。
基礎に大きなひび割れがある場合や、無筋コンクリート基礎の場合は、基礎補強が必要になることがあります。
壁が少ない間取り
昔の家は、開放的な続き間や大きな窓がある一方で、耐力壁が不足していることがあります。
リノベーションでさらに壁を抜きたい場合は、耐震性とのバランスを慎重に見る必要があります。
屋根が重い
瓦屋根など、建物の上部が重い住宅は、地震時に揺れの影響を受けやすくなります。
屋根の軽量化を同時に行う場合、屋根工事の費用も加わります。
リノベーション範囲が広い
耐震工事だけでなく、断熱、配管、間取り変更、内装、設備交換まで同時に行う場合、総額は大きくなります。
ただし、壁や床を解体するタイミングで耐震補強を行えるため、後から単独で工事するより効率的な場合もあります。
築40年・築50年の住宅は耐震工事した方がいい?
築40年・築50年の中古住宅を購入する場合、耐震工事はかなり重要な検討項目です。
特に築50年前後の木造住宅は、旧耐震基準で建てられている可能性が高く、耐震診断を受けずにリノベーションを進めるのはリスクがあります。
ただし、築古住宅だからといって、必ずしも「耐震工事すれば問題ない」とも言い切れません。
確認したいのは、次のポイントです。
- 建物の構造がどの程度健全か
- 基礎に大きな劣化がないか
- 雨漏りやシロアリ被害がないか
- 地盤に不安がないか
- 耐震工事後にどの程度の期間住む予定か
- 建て替えと比べて費用面で納得できるか
築古住宅では、耐震工事だけでなく、断熱、配管、屋根、外壁、水回りまで手を入れる必要が出ることもあります。
そのため、判断軸は「耐震工事ができるか」だけではありません。
耐震工事をしたうえで、安心して長く住める家になるかを考えることが大切です。
知人でも、最初は「地震が怖いから建て替えようか」と悩んでいたものの、費用が想定より大きくなり、結果的に耐震工事とリフォームを組み合わせて満足度の高い住まいにできたケースがありました。
築古住宅は、建て替え一択ではありません。
ただし、耐震診断、劣化状況、予算、今後の住み方を整理したうえで判断する必要があります。
耐震工事に補助金は使える?
耐震工事では、自治体の補助金を使える場合があります。
国土交通省は、耐震診断や耐震改修に対する支援制度があり、地方公共団体によって補助制度が異なるため、まずは住まいのある自治体に相談するよう案内しています。
補助対象になりやすいものには、次のようなものがあります。
- 耐震診断
- 補強設計
- 耐震改修工事
- 除却や建て替えに関する支援
- 高齢者世帯向けの支援
- 木造住宅向けの支援
ただし、補助金は自治体によって条件が大きく違います。
たとえば、次のような条件が設定されていることがあります。
- 対象となる建築年
- 木造住宅かどうか
- 自ら居住している住宅か
- 耐震診断の結果
- 所得制限
- 申請前に着工していないこと
- 登録された業者・建築士による診断や工事であること
特に注意したいのは、申請前に契約・着工すると補助対象外になることがある点です。
中古住宅を購入してすぐにリノベーションしたい場合でも、耐震補助金を使うなら、先に自治体へ確認してから進める必要があります。
耐震工事で使える減税制度も確認する
耐震工事では、補助金だけでなく、所得税や固定資産税の減税制度を使える場合もあります。
国土交通省は、特定のリフォームを行った場合、所得税の税額控除や固定資産税の減額措置を受けられる可能性があると案内しています。
たとえば、所得税については、旧耐震基準で建てられた住宅に対して、現行の耐震基準に適合するリフォームを行った場合、税額控除を受けられる可能性があります。
また、固定資産税については、昭和57年1月1日以前から所在している住宅に対して、現行の耐震基準に適合する耐震リフォームを行った場合、翌年分の固定資産税が2分の1に軽減される可能性があります。工事費が50万円を超えることなどの要件もあります。
固定資産税の減額措置は、工事完了から3か月以内に市区町村へ書類を提出する必要があるため、工事後に慌てないよう事前に確認しておきましょう。
耐震工事は住みながらできる?
耐震工事は、内容によっては住みながら進められる場合があります。
国土交通省の耐震改修サイトでも、外側から壁や基礎を補強するなど、住みながら一部ずつ進められるケースがあるとされています。
住みながらできる可能性がある工事には、次のようなものがあります。
- 外壁側からの壁補強
- 床下からの基礎補強
- 一部屋ずつ進める壁補強
- 金物補強
- 屋根の軽量化
一方で、次のようなケースでは仮住まいが必要になることもあります。
- 床や壁を大きく解体する
- 水回りの位置を変える
- スケルトンリノベーションを行う
- 断熱工事や配管更新も同時に行う
- 生活スペースを確保できない
耐震工事だけなら住みながらできる場合もありますが、中古住宅リノベーションと同時に行う場合は、工事範囲が広くなるため、仮住まい費用も含めて考えておいた方が安心です。
耐震工事はどこに頼むべき?
耐震工事は、通常の内装リフォームとは違い、建物の構造に関わる工事です。
そのため、単に「安いリフォーム会社」に頼むのではなく、耐震診断や耐震改修の知識がある専門家に相談することが大切です。
国土交通省は、耐震診断は建築士などが行い、診断結果に基づいて建築士が耐震改修設計を行い、工事業者が改修工事を進める流れを示しています。
相談先としては、次のような選択肢があります。
| 相談先 | 向いているケース |
|---|---|
| 自治体の相談窓口 | 補助金や登録業者を確認したい |
| 建築士 | 耐震診断・補強設計を依頼したい |
| 工務店 | 耐震工事とリノベをまとめて相談したい |
| リフォーム会社 | 内装・設備工事も含めて相談したい |
| インスペクション対応会社 | 中古住宅購入前に調査したい |
中古住宅を購入してリノベーションする場合は、購入前の段階でインスペクションや耐震診断について相談できる会社を選ぶと安心です。
また、訪問営業で「今すぐ耐震工事をしないと危険です」と不安をあおるような業者には注意が必要です。
耐震工事は、診断、設計、見積もり、補助金確認の順番で進めるべき工事です。焦って契約するのではなく、複数社に相談しながら判断しましょう。
中古住宅リノベ前に確認したい耐震チェックリスト
中古住宅を購入してリノベーションする前に、次の項目を確認しておきましょう。
- 建築確認年月日はいつか
- 旧耐震基準の住宅ではないか
- 2000年以前の木造住宅ではないか
- 耐震診断を受けられるか
- 自治体の補助金対象になるか
- 基礎にひび割れがないか
- 雨漏りやシロアリ被害がないか
- 増改築履歴が確認できるか
- 屋根が重すぎないか
- 1階に壁が少なすぎないか
- リノベ費用に耐震工事費を含めているか
- 建て替えと比較したか
- 工事中の仮住まい費用を見込んでいるか
このチェックリストで不安が多い場合は、物件購入前に専門家へ相談した方が安全です。
中古住宅は、物件価格だけを見ると魅力的に見えることがあります。
しかし、購入後に耐震工事、断熱工事、配管更新、屋根・外壁補修が重なると、想定以上の費用になることもあります。
「安く買って好きにリノベーションする」ためには、購入前に見えない部分まで確認しておくことが大切です。
耐震工事とリノベーションは同時に考えるのがおすすめ
耐震工事は、リノベーションと同時に考えるのがおすすめです。
理由は、壁や床を解体するタイミングで構造部分を確認しやすいからです。
たとえば、間取り変更で壁を撤去する場合、その壁が構造上重要な壁であれば、別の場所で補強が必要になることがあります。
また、断熱工事で壁を開けるなら、そのタイミングで耐震補強を行える可能性もあります。
逆に、内装をすべて仕上げた後で耐震性に問題があるとわかると、再び壁や床を壊す必要が出ることもあります。
リノベーションでは、次の順番で考えると失敗しにくくなります。
- 建物の状態を確認する
- 耐震性を確認する
- 雨漏り・シロアリ・基礎を確認する
- 断熱・配管・設備を確認する
- 間取りや内装を考える
リノベーションというと、どうしても見た目の変化に意識が向きます。
しかし、長く安心して暮らすためには、見えない部分にどれだけ予算を使うかがとても重要です。
耐震工事で後悔しないための注意点
耐震工事で後悔しないためには、次の点に注意しましょう。
耐震診断を受けずに見積もりだけで判断しない
耐震工事は、建物の弱点を把握したうえで計画する工事です。
診断なしで「だいたいこのくらい」と見積もられても、本当に必要な補強かどうか判断しにくいです。
補助金の申請タイミングを確認する
補助金は、工事前の申請が必要なケースが多いです。
契約後や着工後では対象外になることがあるため、必ず事前に自治体へ確認しましょう。
安さだけで業者を選ばない
耐震工事は、見た目では仕上がりの良し悪しがわかりにくい工事です。
金額だけでなく、診断内容、補強計画、施工実績、説明のわかりやすさを確認しましょう。
リノベ全体の予算に入れておく
中古住宅リノベーションでは、キッチンやお風呂、床材などに予算を使いたくなります。
しかし、耐震性に不安がある住宅では、先に構造部分の予算を確保しておく必要があります。
建て替えも比較する
築50年・築60年の住宅では、耐震工事だけでなく、断熱、配管、外壁、屋根、基礎の補修が必要になることがあります。
総額が大きくなる場合は、建て替えと比較した方がよいケースもあります。
まとめ:耐震工事は中古住宅リノベの前に必ず確認したいポイント
耐震工事は、家の見た目を変える工事ではありません。
しかし、中古住宅や築古住宅で安心して暮らし続けるためには、とても重要な工事です。
特に、築40年・築50年の住宅や、昭和56年以前に建てられた住宅では、まず耐震診断を受けることをおすすめします。
耐震工事の費用は、建物の状態や工事内容によって大きく変わります。築50年・延べ面積約100㎡の木造住宅では、224万円ほどかかるモデルケースもあります。
ただし、自治体の補助金や所得税・固定資産税の減税制度を使える場合もあります。補助金や税制優遇は地域や条件によって異なるため、必ず工事前に確認しておきましょう。
中古住宅リノベーションでは、内装や設備だけでなく、耐震性、断熱性、配管、劣化状況まで含めて判断することが大切です。
「安く買って、きれいにリノベーションする」だけでなく、安心して長く住める家にする。
そのために、耐震工事はリノベーション前に必ず検討しておきたいポイントです。
FAQ
耐震工事の費用はいくらくらいですか?
建物の状態や工事内容によって大きく変わります。部分補強なら数十万円台で済む場合もありますが、建物全体の耐震改修では100万円台後半から数百万円になることもあります。国土交通省のモデルケースでは、築50年・2階建て・延べ面積約100㎡の木造住宅で224万円ほどとされています。
築50年の家でも耐震工事はできますか?
可能なケースはあります。ただし、基礎、柱、土台、雨漏り、シロアリ被害などの状態によっては、耐震工事だけでなく大規模な補修が必要になることもあります。まずは耐震診断と建物調査を行い、建て替えと比較して判断しましょう。
耐震工事に補助金は使えますか?
自治体によっては、耐震診断や耐震改修に補助金を用意している場合があります。制度は地域によって異なるため、建物がある市区町村の窓口で確認することが大切です。
耐震工事は住みながらできますか?
工事内容によります。外側から壁や基礎を補強する工事などは住みながらできる場合がありますが、床や壁を大きく解体する場合や、リノベーションと同時に行う場合は仮住まいが必要になることもあります。
耐震工事はどこに頼めばいいですか?
まずは自治体の相談窓口や、耐震診断に対応できる建築士に相談するのがおすすめです。そのうえで、耐震改修の実績がある工務店やリフォーム会社に見積もりを依頼しましょう。